3DSラインを作ってみた
拙作「PetitComm」で安定した有線接続が必要になったので、専用の回路を作ってみた。
原理
いきなり作る前に、理論(と呼べるほどの物でもないけれども)を考えてみる。音響機器に詳しい人ならば、マイクに抵抗があって、それによって入力の音質が変わることは常識だと思う。(私はそこまで詳しくない)
今回の3DSラインはこれを利用した。3DSのマイク入力端子に普通の「抵抗」をつなげて、マイクであると誤認識すると期待して、マイクの端子とGNDを抵抗でつなげてみた。
すると、500Ωから14kΩくらいの抵抗でマイクであると誤認識して、明らかに内蔵マイクから音を拾わなくなった。つまり、イヤホンジャックから信号を入力できる状態になった。
ということで、以下のような回路を考えた。ここからは電気回路寄りの話になるので、難しいと感じたら実作のところまで読み飛ばしてもらっても構わない。ただ、作成するときは回路図を見ながらやってほしい。
この回路は、3DSにマイクであると誤認識させると同時に、コンデンサーを使ってマイク端子(3DS MIC)から出てくる直流成分(2Vくらい)をカットするものである。
信号の直流成分にとって、コンデンサーは絶縁と同じなので、マイク入力とGNDが抵抗でつながっているだけの状態となる。(おそらく3DSはこの直流成分を用いてマイクを認識していると考えられる)
一方で、交流成分に対しては、PC側の音声出力(PC Audio Output(L or R))をハイパスフィルターに通して3DSに入力している状態となる。ここでは、12kΩ($=R$)の抵抗と10µF($=C$)のコンデンサーを使っているので、カットオフ周波数$f$は
となる。また、ハイパスフィルターの伝達関数$|G(\omega)|$(≒入力電圧と出力電圧の比)は
\begin{align*} |G(\omega)| &= \left | \frac{R}{R+\frac{1}{j\omega C}} \right | \\ &= \frac{\omega CR}{\sqrt{1+(\omega CR)^2}} \end{align*}なので($j$は虚数単位、$\omega$は交流信号の角周波数、周波数の$2\pi$倍)、可聴域の下限である20Hzでの値は$|G(\omega)|\simeq1.00=0\mathrm{dB}$となり、ほとんど信号を歪めずに3DSに入力できることがわかる。(ちなみに、コンデンサーの値を1µFにすると急激に下がって、20Hzで$|G(\omega)|\simeq0.83$とかになってしまうため、最低でも4.7µFは欲しい。)
(補足:十分時間が経ったときの交流回路において、回路の微分方程式の関係から、コンデンサーは虚数値の抵抗を持った抵抗とみなせる。こうすることで、オームの法則$V=RI$のように、一次方程式で計算ができるようになる。ちなみに、複素数の値を持つ抵抗の位相は、電圧が電流に対してどれほど位相が進んでいるかを表す。)
抵抗は高くても14kΩが限界で、しかも14kΩでは接続が不安定になるので、12kΩあたりがいいと考えられる。(丁度その値の抵抗も売ってるし)
一方で、コンデンサーはマイクの認識にほとんど関係がない感じがするので、無限大に増やせるし、カットオフ周波数の式から、できるだけ大きいほうがよい。ただし、コンデンサーの電圧-容量特性とコンデンサーの値段に注意する必要がある。(某電子部品店では、10µFの積層セラミックコンデンサーで1個50円程である。スーパーキャパシターを使うと、もっと値が張る&電圧-容量特性があまり良くない&耐圧が低い)
実作
電子パーツショップで、12kΩの抵抗2本、10µFのセラミックコンデンサー2つ(逆接続したときを考えて、有極性は選ばないほうが良い)、3極のオスオスのイヤホンコード、4極と3極の変換器を買ってきた。電子パーツショップで買うと家電量販店よりかなり安く購入できる。はんだ付けとかをしないなら、ブレッドボード1枚、イヤホンコード1本、ブレッドボードにさせるイヤホンジャック2つ、ジャンプワイヤーを追加で買ってきて作成するというのも良いだろう。
ここで、抵抗とコンデンサーが2本ずつあるのは、ステレオに対応させるためである。(3DSでは意味がないけど)
上の回路図のグラウンドは3極のイヤホンコードのグラウンドにつながるようにして、3DS MICとPC Audio Output(L or R)はそれぞれイヤホンコードのLもしくはRにつなげるようにして(伝われ)作った。
下の画像は出来上がったもの。
裏面。
これを使うと、今まで3DSと相性の悪かった(=3DSが認識してくれなかった)PCとも繋がるようになって、PetitCommの通信路の性能が上がった。めでたしめでたし。
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